芸大生だったわたしに贈る10の答え
ことし、母校で3日間授業をする機会をもらったので、芸大生だったときのことを思い出しながら書きました。
①これからどうやって生きていけばいい?
答え:だいたいのことはお金があれば対処できるからお金の管理は大事。だけどお金がいくらあっても買えないのは人の縁でこれが1番大事。
②自分の美術の世界は一般社会とかけ離れているのではないか?
答え:どんな業種も狭いところは狭いから気にしなくて良い。芸大での経験を、需要が非常に限られた美術という商品を売り込む訓練だと思えば、業種が変わって需要がそこそこあるものを取り扱うとき易しく感じるかも。
③展示って何のためにするの?
答え:自分ひとりの制作物だけを見に来てもらう個展は、自分の集客力つまり誰がわざわざ足を運んでくれるのか知れる。それはSNSの「いいね」の数とはたぶん違くて、自分の実力に近いのではないかと思う。
友人同士のグループ展は、遊びでやっていると思われがち。知らない人同志のグループ展で、運良く気の合う作家さんと知り合えたら、制作を続ける上でモチベーションが上がるし、同業者で相談相手に出会えたらとても心強い。
④私に才能はあるの?
答え:ない能力も、ある能力もある。試しにやってみると、人より苦労せずに出来る得意なことが見えてくる。
⑤留学?進学?就職?
答え:経済状況に応じて、できる時にできることをする。
⑥いままで作った作品に意味はあるの?
答え:「変なものを作ってしまった」経験は作ってみてわかるし、物体が残るからなかなか忘れない。だから失敗を繰り返しにくい。芸大で作った数々の駄作が宝物になる。
⑦芸大生のときにして良かったこと
答え:留学も、バイトも、できる時間と体力があるときにやって良かった。
気になる作家さんの展示のオープニングに出掛けて行って、ひとまわり上の世代の作家さんとお話し出来たのは良い経験だった。
⑧ハラスメント対策
答え:作品のお客さんでも、美術関係者でも、誘われたら自分1人では行かないこと。地方の場合は、1人で助手席に乗るような場面は作らないほうがいい。あなたにだけ教えてあげる、というような言葉を真に受けない。そしてたとえ何か起きても、わたしが悪かったのかもしれないなどと責めないこと。
⑨制作をどうやって続けていけるか
答え:ほとんどの場合、資金を作って生活を整えれば続けられる。
⑩有名な美術家の多くは苦しい経験を糧にしているように見えるけど、美術を志すことは苦悩なの?
答え:年を重ねれば、誰しも大変なことが自然に起きるから、美術家だから大変な思いをしなきゃいけないなんてことは無い。
一方で、美術を続けるのは大変なことなので、自分を幸福にすること、気の合う人と過ごすこと、楽しいこと、心地よいことをすることで、大変な出来事を乗り越える力を養うことが必要。
そうすることで、他者を楽しい気持ち、心地よい気分にするもの、共感を誘うものが作れると考える。
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