なるべくお金をかけずに海外の美大へ留学する方法

交換留学という制度がある。

日本の大学に在学しながら、提携している外国の大学へ留学できるという。

つまりは交換留学先の大学には学費を払わなくていいというありがたい制度である。とは言え、海外留学となれば、学費の他にも、渡航費に家賃、食費、材料費もかかる。東京芸大は私立美大に比べれば学費は安いけれど、それでも学費の半額免除を受けていた私には、海外留学は高いハードルであった。それでも留学がしたかったのは、大学の先輩や、インターン先の先輩たちの留学経験談が羨ましかったからだ。異国の人々との交流、異なる文化圏での失敗談、日本とは違う美術教育、そうした経験の数々が、彼らの誇らしげな表情から発せられる様は、眩しかった。そうして積もり積もった留学コンプレックスからの解放を求めて、留学の手段を探し始めた。それが大学院に入りたての頃。


ここは競争率の高い奨学金に望みをかけるしかないか・・・。しかし、奨学金が受けられず、留学が出来ないのでは困るのである。絶対留学したい。一つのことに執着すると、他のことは考えられなくなってしまうもので、その時は、留学しなければ未来が見えない、くらいに思っていた。正直、誰も知らないような国でもいい、なるべくお金をかけずに留学したい。実力・将来性・人間関係・経済力・容姿などなど、色々なコンプレックスを抱える中で、何か自信になる経験が欲しくて必死だったのだと思う。


あるとき、大学の留学情報の貼られている掲示板をウロウロしていて見つけたのが日本学生支援機構(JASSO)の奨学金。指定された留学先への留学が決まれば、毎月数万円の奨学金が受けられるというものだった。百万円単位のド派手な奨学金の様な迫力はないものの、月々の家賃に充てられそうな堅実な額が良い。大学名のリストを見ると、イギリスのスコットランドにあるグラスゴー美術大学、というところがある。ここにしようと即決した。ちょうど、英語以外を勉強する気にならなかったので、アメリカかイギリスかな〜と思っていた矢先のことだった。留学期間は9月から11月までと短めだけど、留学コンプレックスから脱却するには3ヶ月で十分だ。グラスゴー美術大学って聞いたことないし(失礼)、倍率も高くないだろうと踏んで、申請の準備を開始。


交換留学では、日本の大学内での審査基準を満たしていれば、留学先から断られることはまずない。その審査基準のうち、語学力が一番のハードルになる。イギリスの場合は、IELTSという、主にイギリスとニュージーランドで使われる英語試験のスコアが必要。 自主勉強のみで、なんとか必要なスコアを取得できたのはラッキーだった。必要なスコアぴったりだったので、本当にギリギリだったけど。この試験も一回25,000円の受験料なので、貧乏学生には痛いのだ。


必要な書類を提出し、学内の審査にも通ったので、あとはひと夏バイトしまくってお金貯めよう。そんな風に油断していたころ、まさかの「留学受け入れ不可」のメールがグラスゴー美術大学から届く。この時、私は大学2年目を4月から休学していた。当時、東京芸大で交換留学をする人は、その年度に休学するのが通例だった。交換留学ができると確信していたからこそ休学したのに、突然の受け入れ拒否。通学は出来ず、交換留学も出来ない、突如として宙ぶらりん状態に陥ったのだった。


つづく